-怖い話-ミラー越しにあった怖い目!深夜のタクシー

スタジオミュージシャンをしていた頃、だいたい22時頃からスタジオに入り作業をして、スタジオを出るのが2時〜4時くらいでした。
スタジオには駐車場が3台しかとめられないので、行く時は交代でメンバーの誰かが車を出してまとめて乗って行ってました。
でも帰りはバラバラになることもあって、そんな時はタクシーしか帰る手段がなかったのです。

ある冬の夜、私は1人で帰ることになり道に出てタクシーをとめて乗りました。
運転手は30代くらいのスキンヘッドの男性でした。
行き先を伝えて車が動き出すと、運転手は私のギターケースを見て話しかけて来ました。
『ギター弾かはるん?』
『はい』
『バンドしてはるの?』
『はい』
『今日は寒かったなー』
『そうですね』

私はとても疲れていたので話しかけないで欲しいと思ってたら、しばらくすると運転手は話しかけて来なくなりました。
ラジオがかかってないので静寂が続いてたのですが、私が寝ようと目を閉じたら突然運転手が話し出しました。
『ぼくねー、この仕事しててたまにムカつくことがあるんですよー』
『はい』
『こっちが一生懸命話しかけてるのに“はい”とか“そうですね”とか適当な返事ばっかりするヤツおるでしょ。そういう客はどっか山の中に連れて行って置いて来てやろかって思うんですよ』
『(え?)』
『そういう客の態度失礼やと思いません?』
『あ、そうですね(あっ(・_・;))』
私は自分のことを言われてるのに気づきました。

家に帰るには2つの大きな通りのどちらかを走るのですが、深夜なので渋滞はなくどっちを走っても時間は変わりません。
それなのに運転手は道をそれて山道へと入って行きました。
山の中で降ろされたらどうしようと不安に思って、私は運転手に必死に話しかけ出しました。

『そうですよね、いますよね、そんな客』
『…』
もう何も言わない運転手のミラー越しに合った目がものすごく怖くて、もしここで降ろされたらタクシー拾える道に出るまでほぼ街灯のない山道を30分程歩かないといけません。
運転手も怖いし深夜の山道も怖い。
途中に民家もなく、携帯電話なんてない時代です。
どうしていいか分からずとにかく焦りました。

結局その後運転手は家の近くまで一言も喋らず、ちゃんと家の近くで降ろしてくれました。
お金を払う時に確か5000円札を出したら、おつりをくれずにいたので、私はきっと怒ってるからだと思い『スミマセンでした』と言うと、やっとおつりをくれました。
家までは車で30分ほどの時間が、やや遠回りしてとても怖い時間になりました。

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