-怖い話-社長の母親が私に憑依して言わせたことは?

スタジオミュージシャンをしていた頃、小さな音楽事務所に所属していました。
元シンガーソングライターで昔デビューしていた社長と私たちバンドメンバーの5人とそのマネジャー、そして事務などを担当していた秘書の女性2人でした。
社長は私たちと親睦を深めるために食事に行ったりゴルフに連れて行ってくれたりしてました。

社長の家に招待されて

ある日私たちバンドメンバーとマネジャーは、社長の家に招待され晩ごはんをご馳走になりました。
その時のお話です。

社長の家は京都から奈良に入ったすぐくらいのちょっと山を上がった所にあり、私たちは車2台で行きました。
社長の家はとても大きく、車は何台も置けるくらいのスペースがありました。
私は家の敷地に入ってから急に頭がぼーっとしだして車酔いしたのかと思ってました。

そっちじゃない!こっち!

車をおりて正面に立派な玄関があったのでバンドメンバーがそこに歩いて行った時に、後ろを歩いていた私は『そっちじゃない、こっち』と左側を指差しました。
左側には玄関よりは小さめのドアの別の入口があって、そこから入れと言ったのです。
私も含めてメンバー全員が社長の家に来たのは初めてやのに、どうしてそんな分かったようなことを言ったのか他のメンバーは不思議に思ったそうです。
すぐに社長がそのドアから出て来て、玄関には大きな荷物が置いてあるからこっちから入ってくれと言いました。

この座布団使って!

家に入ると何畳あるのか分からないくらいの部屋に行き、中央に大きな机が置いてありました。
社長は『適当に座っといて!もうちょっと待ってな』と言い、部屋から出て行きました。
メンバーが座ろうとした時に、私は『この座布団使って!』と押し入れを開けて茶色い座布団を出しました。
またみんな不思議に思ったそうです。

こんな上手にうす〜く切ってるわ。ほら見てみ?

しばらくして奥さんが部屋に来てみんなに挨拶をした後、社長も手伝ってお料理が運ばれて来ました。
奥さんの手作りのハンバーグだったと思います。
みんなで楽しく食事をしてると、お皿に切ってあるたくあんがあったのですが、私はそのたくあんをひときれお箸でつかんで『ほら見て!こんな上手にうす〜く切ってるわ。ほら見てみ?』と笑いながらみんなに言ったのです。
社長も奥さんもみんながびっくりしたらしいのですが、他のメンバーが私がさっき入口を教えたことや座布団を出したことなどを社長に話すと、奥さんの表情が変わりました。
そしてヒソヒソと社長と話して奥さんは部屋から出て行きました。

社長が私に「大丈夫か?」

社長は私に『大丈夫か?』と訊いたのですが、私はなにを大丈夫なのかと言われてるのかが分からず、別になんともないので大丈夫と答えました。

食事が終わり、社長が昔リリースしたアルバムやシングルのレコードやポスターなどを見せてくれました。
1番売れた曲は昔CMにも使われいたので、あの曲を歌ってたのは社長なんかとメンバーみんながびっくりしました。

端っこのトイレにおばあさんが

しばらくしてメンバーがトイレに行きたいと言いました。
トイレは田舎の古い家によくあるような家の外にあり、はっきりと憶えてないのですが6〜8人分くらいの数がありました。
社長が『車置いた左側を回って来たらトイレあるわ』と言った後に、私が『そこの廊下の障子開けて行き!草履置いてあるから』と言いました。
メンバーはまたか!とちょっと気味悪く感じていて、社長の顔は強張ってたそうです。
草履が2足しかなかったので2人ずつトイレに行ったのですが、戻って来たメンバーが1番右端のトイレに電気がついてたと言いました。
すると社長が、右端のトイレは壊れてるし電気がついてるのはおかしいと言いました。
トイレはたくさんあるので私は気にしなかったのですが、私がトイレに行く時にその電気のついていた1番端っこのトイレにおばあさんがす〜っと入って行きました。
入ると言っても扉は開けてなくて、扉に吸い込まれるようにです。
ちゃんとした姿勢の小柄なおばあさんで、膝から下はよく見えなかったです。
だからおばあさんの霊がいるのだと分かりました。
ただ、怖くは感じなかったです。

おばあさんは亡くなった社長のお母さん

部屋に戻り私はおばあさんが気になってたので社長にさっきのことを話したら、かなりびっくりしてました。
何回もホンマか?と訊いてました。
どうやらそのおばあさんは、その年に亡くなった社長のお母さんでした。

おばあさんが見送ってくれた

あまり遅くまでいては悪いので、夜9時頃に私たちは社長の家を出ました。
家を出る際に社長と奥さんが外に出て来てくれてお見送りしてくれたのですが、荷物が置いてあると言ってた立派な玄関の前に、さっきトイレの時に見たおばあさんが私たちを見てました。
私はおばあさんに一礼して車に乗り、出発しました。

おばあさんの霊が私に言わせたこと

帰りの車の中でみんなから質問攻めでしたが、どうして初めて行った家やのに、いくつかのことが分かってたのか?と言われても、そもそも私はそんなこと話した記憶はありません。
間違いなく言ってたらしいのですが、私は言ってません。
だからたぶんおばあさんの霊が私に言わせたのでしょう。
そしておばあさんは奥さんと仲が悪かったのかもしれません。
たくあんのことはイヤミにしか聞こえなかったようで、奥さんは実際に言われたことがあったから表情が変わり部屋を出て行ったのだと思います。
座布団は用意してなかったので、ちゃんと用意してなかった奥さんにダメ出しをしたのかもしれないですね。
トイレは右端が壊れてるよと教えてくれたのでしょう。

これは、おばあさんが私に一瞬でも数回憑依したと言うことですよね。
頭がボーッとしたのが何回かあったのは憶えてます。
イヤな役をやらされましたが、その後私を含めメンバーやマネジャーには何もなかったですよ。
ただ、私が社長の家に行ったのはそれが最後になりました。

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